PROJECT STORY

NYK DataLakeの可能性を引き出す

海運のビッグデータ活用が始まっている。
航行中の船舶から得られる大量のIoTデータをはじめ
多種多様な情報を、活用しやすい形に整理する。
その現状と将来を語ってもらった。

PROJECT STORY 01

航海の最適解を導き出すビッグデータ活用

現代における船舶運航は情報なくしては語れない。航海中の船から得られるデータは多種多様であり、かつリアルタイムで変化していく。サーバ環境の飛躍的向上と分析基盤の構築方法の発展を背景として、これらデータをダイナミックに活用することが可能となった。ビッグデータ分析の海運版である。NBSでこのプロジェクトに携わっているひとり、IOに解説してもらった。

「従来型のデータ分析は、分析する目的や手法に応じて集めるデータの種類、集め方を決めていました。しかし、ビッグデータは先ず、とにかくデータをどんどん溜めていくところから始まります。私たちのプロジェクトで言えば、先ず、航行速度、燃料使用量、エンジンの回転数をはじめとする機器類のIoT(モノをインターネットのようにつなげた)データがあります。また、報告書など人間が入力するテキストデータもあり、さらに写真などの画像データもあります。現状では、各船のIoTデータが1時間に1回、200〜600件のデータが送られてきます。1件あたりが1200〜6000項目ですから、かなりの量ですね。これを溜めておくのが、クラウド上に構築された『NYK DataLake』です。しかし重要なのは、そこから先です。いかに使いやすいようにデータ変換やマッピング処理などの整理・整形するのか。私たちの腕の見せどころです」

そうやって提供されたデータが、さまざまなツールやアプリで分析・可視化され、最適な航路や最小燃費の運航を策定に役立てられる。

「ビッグデータ活用にクラウドを用いる最大のメリットは、容量やCPUなどのスペックを決めてハードを調達しなくてよいところですね。必要が生じた時にスペックアップできるので、柔軟かつ迅速な対応ができます。クラウドで提供されるサービスは次々に新しいものが出てきますので、私たちも勉強の連続です。どうやって自分たちのプロジェクトに活用するか、知恵を絞るのもこの仕事の醍醐味のひとつですね」

PROJECT STORY 01

今後は新しいソリューションの創造をめざして

ビッグデータ特有の困難にぶつかることもある。とくに苦労するのは、IoTデータの取り込みが滞った時のリカバリだという。サーバの事情による場合もあれば、処理をしているプログラム同士が干渉しあって入力できない場合もある。いずれにせよ、データ量が多いだけにできるかぎり早く対応しなければならない。

「サーバの入口にデータが山積みになっているイメージですね。最初に起こった時は慌てましたが、リカバリ処理を自動化することで、データの古い順から処理していく仕組みをつくって乗り切りました」

こうしたトラブル対応のときに心強いのは、対策のためのアイデアを出しあう仲間の存在だ。現在、NBSでこのプロジェクトを担っているのは3人。上長、IO、同僚——の少数精鋭チームである。新しい案件が始まる時はいうまでもなく、平常時においても毎日必ずディスカッションを行っている。
「自分ひとりで考えて良いアイデアが閃いたとしても、足りないものは気付かないものです。チームで意見交換をするとそれが見えてきます。私たちのチームの鉄則は『失敗を隠さない』。例え、失敗しても本人の責任ではなく、ものごとのなりゆきでそうなっただけです。大切なのは、その失敗をチームの糧とすることです」

チーム内での「事件簿」もつけて、ことあるごとに見直しているそうだ。

IOがこのチームに参加したのは2017年のこと。当初はNYKグループ内外からの問い合わせに対応するヘルプデスクや稼働状況の確認など、主に運用面での役割を担っていた。しかし、それらの経験を踏まえ、またクラウドサービスの習熟を経て、現在はデータを取り込んで構造化する側の仕事がメインになっている。

「今後はさらに一歩進んで、新しいソリューションの提案ができるようにと考えています。NYK DataLakeは、まだまだ可能性を秘めています。例えば、AIS(Automatic Identification System)という船舶の位置情報を随時確認できるシステムがあり、ここからのデータをNYK DataLakeに取り込むことで、その船が今後予定している目的地に向かう最適な航路と速度、燃料補給のタイミングなどを、高い精度で指示できます。また、これまでは定期的に行っていた機器のメンテナンスも、データ分析によりコスト的にメリットのあるタイミングでできるようになるでしょう」

今後のヴィジョンを語る彼女の表情は明るい。NYK DataLakeを活用して海運の在り方さえ大きく変わる未来、それは、そう遠くないと確信しているようだ。